写真術 | No.16 パーツの魅力
私の著書のひとつに「猫の手」(文春ネスコ刊)という本があります。文字通り、猫の手(足?)ばかりを集めた写真集で、表紙も猫の肉球のアップ。私が撮った猫の手のポストカードを見た編集者の方からお話をいただいて出来たものです。以前から猫の手は面白いなぁと思って、猫を撮るたびに顔だけではなく、撮りためていたのをまとめました。
その後、肉球占いなども加えた「ねこの肉球完全版」(文集文庫)も出しています。
猫は多面的な魅力を持つ被写体です。顔や全身のフォルムだけでなく、パーツもユニークで美しい。視点をちょっとずらしてパーツをねらってみると、あなたの猫写真のバリエーションがさらに拡がります。
- しっぽ:猫の尾は感情表現手段のひとつ。長い尾はピンと伸ばしたり、くるりと丸まったりと表情豊か。短い尾やカギシッポもキュートな魅力があり、後ろ姿のよいアクセントに。
- 耳:敏感に物音に反応する瞬間を狙ってみる。クローズアップで撮るとうっすら血管が透けて見える繊細な美しさがあり、梶井基次郎が「切符切りでパチンとやってみたい」と言った気持ちがわかる(?)
- ヒゲ:毛色によってヒゲの色もグラデーションがかかっていたりする。猫は興奮するとヒゲがだんだん前にせり出して来てパッと拡がる。
- おなか:飼い主に対してならではの甘えポーズがシャッターチャンス。おなかの柄がチャームポイントになっている猫も多い。